「生産現場の人材不足で納期に間に合わない」「繁忙期の人員配置に苦労している」「製造コストの削減に頭を悩ませている」―。製造業の経営者や人事担当者が直面するこうした課題に対して、有効な解決策の1つが『製造請負』です。
製造請負を導入できれば、生産量の変動に柔軟に対応しながら、人材確保のコストを最適化できます。さらに、品質保証やコンプライアンス対応まで、製造に関わるさまざまなリスクを請負会社と分担できます。
しかし、近年問題視されている「偽装請負」のリスクも見過ごすことはできません。そこで本記事では、製造請負のメリット・デメリットを詳しく解説するとともに、導入時の注意点まで解説します。
「製造現場の課題を根本的に解決したい」「無駄のない生産体制を構築したい」とお考えの方は、ぜひ最後までご一読ください。
製造請負を基軸に製造現場の効率化をお考えでしたら、まずはI-OTAにご相談ください。豊富な製造実績と技術力を持つプロ集団が、お客様に最適な製造請負のソリューションをご提案いたします。
製造請負とは

製造請負とは、工場内の生産工程において、製造工程の一部や特定のライン、工場全体、検品・検査工程、物流業務などを他社に委託する契約形態のことです。請負契約は民法で以下のように定められています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
出典:民法(e-Gov 法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089)
製造請負の特徴は、「成果物」に対して報酬が支払われる点です。
つまり、作業にかかった時間ではなく、完成品の納品に対して対価が発生します。そのため、請負会社は独自の指揮命令系統を持ち、自社の責任で業務を遂行します。
なお、製造請負は業務委託や人材派遣と混同されやすい契約形態です。それぞれの違いについても知っておきましょう。
製造請負と業務委託の違い
製造請負と業務委託は、一見似ているように見えますが、『報酬の対象』に違いがあります。
項目 | 製造請負 | 業務委託 |
---|---|---|
契約の目的 | 成果物の完成 | 業務の遂行 |
報酬の対象 | 完成品 | 作業時間 |
責任の所在 | 完成責任あり | 作業責任のみ |
製造請負では完成品に対して報酬が発生しますが、業務委託では作業時間に応じて報酬が発生します。例えば、製品100個の製造を請け負った場合、製造請負では100個の完成品に対して報酬が支払われますが、業務委託では作業時間に応じて報酬が支払われることになります。
製造請負と人材派遣の違い
製造請負と人材派遣は、製造現場でよく活用される人材活用方法ですが、法的な位置づけが異なることで『指揮命令権』に違いがあります。
項目 | 製造請負 | 人材派遣 |
---|---|---|
指揮命令権 | 請負会社 | 発注企業 |
契約の目的 | 成果物の納品 | 人材の提供 |
期間制限 | なし | あり(原則3年) |
労務管理 | 請負会社 | 派遣先と派遣元で分担 |
製造請負では請負会社が作業者に指示を出しますが、人材派遣では発注企業が派遣社員に直接指示を出します。この違いを理解せずに製造請負契約を結ぶと、偽装請負(後述する注意点を参照)として法令違反になるリスクがあります。
製造請負と他の手法を選ぶ判断基準
製造現場での人材活用方法は、目的によって最適な選択肢が変わります。
- 作業者への直接的な指示や管理が必要な場合 → 人材派遣
- 製品の完成度と納期だけを重視したい場合 → 製造請負
- 特定の作業工程のみを外部に任せたい場合 → 業務委託
製造請負を選ぶ際のポイントは、製造工程全体の効率化とリスク分散を同時に実現できる点です。請負会社が人材管理から品質管理まで一括して担うため、発注側は製品の完成にだけ注力できます。
I-OTAでは大田区の優れた製造基盤を活かし、設計から製造までをワンストップで請け負っております。製品企画の段階から、試作品開発、量産化まで、お客様の課題に応じた柔軟な製造請負体制を参画企業と構築しているためです。
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製造請負が担う2つの役割

製造請負が担う役割は、以下の2点です。
- 繁忙期の生産量の変動への対応
- 人材確保のコスト・リソースの最適化
繁忙期の生産量の変動への対応
製造請負は、需要の波に合わせた生産調整を可能にする役割を担います。
特に季節商品を扱う製造業では、繁忙期に生産量を2〜3倍に増やすことも少なくありません。このような状況で自社のみで対応しようとすると、設備の増強や人員の採用を要し、固定費の増大につながってしまいます。
製造請負では、『必要な時期に、必要な分だけ』の生産能力を確保できます。例えば、夏物商品の製造ピーク時には請負会社のチームを投入し、オフシーズンには規模を縮小するなどです。需要変動に応じた最適な生産体制を構築できます。
人材確保のコスト・リソースの最適化
製造請負は、人材確保にまつわるさまざまなコストとリソースを最適化する役割も果たします。
自社で製造要員を直接雇用する場合、募集・採用活動から教育訓練、労務管理まで、膨大な時間とコストが発生するものです。特に製造業では、技能習得に時間がかかるため、即戦力の確保が課題となります。
製造請負であれば、請負会社が提供する経験豊富な人材チームにより、スピーディーな生産体制の確立が可能です。例えば、新製品の立ち上げの時期に、すでに類似の製品の製造経験を持つチームを導入するといった具合です。
ただし、製造請負にも考慮すべき課題があります。次項では、製造請負を導入する際に注意すべきデメリットについて詳しく解説します。
製造請負契約で依頼する3つのデメリット
製造請負契約で依頼するデメリットは、以下の3つです。
- ノウハウが社内に蓄積できない
- 契約内容に縛られる
- 品質管理が難しくなる
ノウハウが社内に蓄積できない
製造請負を導入すると、委託した工程に関する技術やノウハウが社内に蓄積されにくくなります。作業の実施から改善活動まで、すべてを請負会社が担うためです。
例えば、製品の組立工程を請け負わせた場合、効率的な組立手順や不良品を出さないコツといった現場レベルの知見が、すべて請負会社側に蓄積されていきます。
さらに、製造現場での改善提案や工程の最適化といった、将来の競争力につながる可能性のある知識も、自社内には残りません。後に内製化への切り替えを検討する際や、新製品の開発時にノウハウの不足しない体制づくりが大切です。
契約内容に縛られる
製造請負では、契約時に定めた業務範囲や納期、品質基準などの条件変更も難しいです。請負契約が「完成物の引き渡し」を前提としているため、急な仕様変更や生産量の調整となった場合でも、契約内容の変更には改めて協議を要するからです。
また、契約期間中は請負単金の見直しも困難で、市場環境の変化により原価が上昇しても、契約で定めた単価での納品が求められます。中長期的な事業計画を立てる際には、契約内容による制約を十分に考える必要があります。
品質管理が難しくなる
製造請負では、作業現場が請負会社の管理下に置かれるため、品質管理が複雑化します。発注元である自社が直接的な作業指示を出せないため、品質上の問題が発生した際の即時対応が難しくなるためです。
不良品が発見された場合、請負会社との品質会議を経て対策を講じ、問題解決までに時間がかかるといった具合です。複数の工程を異なる請負会社に委託している場合、品質基準の統一や工程間の連携にも課題が生じやすくなります。
品質管理の課題に対しては、明確な品質基準の設定と定期的な品質会議の実施が不可欠です。しかし、このデメリットは製造請負の一面に過ぎず、適切に活用できれば大きなメリットを得られる方法であるのも事実です。
製造請負契約で依頼する5つのメリット

製造請負契約には、オペレーションを最適化できる以下の5つのメリットがあります。
- コストを削減できる
- コア業務に注力できる
- コンプライアンスの配備ができる
- 品質を保証できる
- リスクを分散できる
コストを削減できる
製造請負の活用では生産量の変動に応じて柔軟なコスト調整が可能になり、人件費を固定費から変動費へと転換できます。例えば、繁忙期には請負会社のリソースを活用し、閑散期には最小限の体制で運営することで、無駄なコストを抑制できるなどです。
また、請負会社の人材の活用により、自社での採用活動や教育研修にかかるコストを抑えられます。労務管理や社会保険関連の事務作業も請負会社が担うため、間接部門の業務負荷とコストも削減できるでしょう。
コア業務に注力できる
製造請負を導入できれば、自社の経営資源をコア業務に集中投下できます。製造現場の定型的な業務を請負会社に任せることで、自社の人材やリソースを新製品開発や技術革新といった付加価値の高い業務に振り向けられるのです。
製品設計や品質管理、工程改善といった専門性の高い業務に社内の優秀な人材を集中させることで、競争力の強化につながります。管理業務の負担が軽減されることで、経営層は事業戦略の立案や新規事業の展開など、より本質的な経営課題に時間を割くことも可能です。
コンプライアンスの配備ができる
製造請負の活用により、労働関連法規への対応を体系的に整備できます。以下の表は、主要な法令対応とその効果を示しています。
項目 | 内容 | 解決できる課題 |
---|---|---|
労働者派遣法対応 | 3年の就業制限を受けず、長期的な人材活用が可能 | 人材の定着・技術継承の困難さ |
指揮命令系統の明確化 | 混在職場での指揮命令系統を整理し、管理体制を確立 | 現場での責任所在の不明確さ |
偽装請負の防止 | 請負会社による独立した業務遂行と適切な指示系統の確保 | 労務リスク・法令違反 |
契約面での法令順守 | 下請法対応、秘密保持契約、製造物責任の明確化 | 契約トラブル・情報漏えいリスク |
従来の体制から刷新し、新たにコンプライアンスを見直しながら最適化できるのも製造請負のメリットだといえます。
品質を保証できる
製造請負では、契約で定められた品質基準に基づいて生産が行われます。請負会社は独自の品質管理体制を持ち、専門的なノウハウを活かして安定した品質を維持するためです。
複数の取引先での経験を持つため、業界のベストプラクティスを取り入れた品質管理手法を提供できます。さらに、品質不良が発生した場合の責任の所在が明確で、契約に基づいた補償も受けられるため、品質リスクを適切にマネジメントできるでしょう。
リスクを分散できる
そのほか、製造請負の活用により事業運営に関わるさまざまなリスクを分散できます。
- コスト面では変動費化によって経営の柔軟性を確保できる
- コア業務への集中投資で競争力を強化できる
- 請負会社と分担して経営リスクを軽減できる
こうしたメリットを最大限に活用し、失敗しない体制構築のためには適切な請負単金の設定が重要です。次に、製造請負契約における費用の決定方法について詳しく見ていきましょう。
製造請負契約の費用は『請負単金』で決まる

製造請負契約の費用は、完成品1個あたりの金額である『請負単金』で決定します。請負単金には、人件費や材料費、設備費用などすべてのコストが含まれています。
ただし、以下の要因が案件ごとに異なるため、発注側と請負側での綿密な協議を通じて、双方が納得できる金額を設定する必要があります。
- 製品の複雑さ
- 必要な技術レベル
- 生産数量
- 納期
I-OTAでは、お客様の製造における課題やニーズを丁寧にヒアリングし、最適な請負単金の設定をご提案しています。製品企画から試作開発、量産まで一貫した体制を持つI-OTAだからこそ、コストと品質の両立を実現できます。
まずは製造請負に関する費用面でのご相談からでも構いません。お客様の状況に合わせた具体的なお見積りと、製造請負導入による効果を詳しくご説明いたします。
製造請負を依頼する際の2つの注意点
製造請負を導入する際は、以下の2点に特に注意が必要です。
- 委託内容は製造請負契約書にまとめること
- 4つの要件で偽装請負を避けること
委託内容は製造請負契約書にまとめること
製造請負契約書は、発注者と請負業者の間で交わされる書面です。法律上の規則はありませんが、委託内容の認識違いによるトラブルを防ぐため、詳細な取り決めが必要です。
特に下請法に該当する場合は、契約書の作成が義務付けられています。以下、基本項目を基軸に明確に定めることで、後々のトラブルを未然に防ぎましょう。
項目 | 内容 |
---|---|
業務内容 | 製品の詳細仕様を記載(通常は別途仕様書・設計図を作成し記名押印) |
原材料・設備 | 支給・貸与の有無と条件(品名、数量、対価、引渡期日、決済条件、所有権等) |
納品 | 納品期日、方法、場所を具体的に規定 |
検品 | 仕様書に基づく検査方法と検収完了までの詳細を規定 |
報酬 | 請負料金の金額、算定方法、支払期日、支払方法(通常は銀行振込、手数料は発注者負担) |
4つの要件で偽装請負を避けること
製造請負が適正に行われているか判断する基準として、以下の4つの要件が定められています。
①作業の完成について事業主としての財政上および法律上のすべての責任を負うものであること。
出典:職業安定法施行規定(e-Gov 法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40002000012)
②作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
③作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。
④自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要なる簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用しまたは企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
要件を1つでも満たさない場合、偽装請負として職業安定法違反に問われる可能性があります。製造請負の導入時には、この要件を満たしているか慎重に確認してください。
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製造現場の効率化とコスト削減を同時に実現する製造請負の中でも、設計から製造までを一括で請け負えるI-OTAは、大田区という日本有数のものづくり集積地に拠点を構える共同事業体です。従来の製造請負会社と異なり、製品企画の段階から、試作品開発、設計、加工まで、お客様の課題をワンストップで解決します。
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I-OTAの一貫体制は、製造請負における無駄を排除できます。設計開発から製造、各種検査、実証実験まで、すべての工程をI-OTA内で完結させることで、外部とのやり取りによる時間的ロスや情報の齟齬を防ぎます。
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まとめ
製造請負は、生産現場の課題を解決する有効な選択肢の1つです。成果物に対して報酬が発生する契約形態であり、生産量の変動への柔軟な対応や人材確保のコスト最適化を実現できます。
製造請負を成功させるためのポイントは、以下の3点です。
- 製品の複雑さ、技術レベル、生産数量、納期を考慮し、双方が納得できる金額を設定すること
- 業務内容、原材料・設備、納品、検品、報酬について詳細な取り決めを行い、トラブルを防止すること
- 4つの要件(財政・法律上の責任、指揮監督権、使用者としての義務、専門性)を満たしているか確認すること
製造現場の効率化とコスト削減を目指すなら、設計から製造までを一括で請け負えるI-OTAのような企業との連携もぜひご検討ください。自社の状況を見極め、メリット・デメリットを十分に理解した上で、導入を進めましょう。